新型コロナ拡大で露呈した米大統領の「資質」
・新型コロナウイルス感染症による死者が世界全体で20万人を超え、そのうち5万4000人余が米国で死亡している最中に、トランプ米大統領の常識に欠ける言動が物議を醸している(数字は4月27日時点)。
・4月23日の記者会見では、「(消毒剤を)注射すれば、あっという間に(ウイルスを)倒せるのではないか」と真顔で語り(翌日に記者をからかうつもりだったと釈明)、各地で当局に問い合わせが殺到した。
根拠ない楽観論
・就任後に、ホワイトハウス内のパンデミック(世界的大流行)対策チームを事実上消滅させ、2月にはウイルスについて「4月になればなくなる」と述べて、科学音痴ぶりを発揮した大統領。
・各国首脳が「第2次世界大戦以来の試練」(メルケル独首相)などと身構える中で、根拠のない楽観論を平気で口にする。
・3月には、トランプ大統領の初動の遅れや危機感の薄さも一因となり、株価が大暴落した。
・再選に向け株高が自慢だっただけに、鼻をへし折られた格好だが、4月に入ると、経済活動再開に向け3段階の指針を公表(17日)し、前のめりの姿勢が目立つ。
・同じ日に、民主党の知事が厳しい外出規制を行っているミネソタ、ミシガン、バージニア各州の名を挙げ、「解放せよ」と住民をけしかけたのは、感染症を政治に利用したとしか思えぬ態度だ。
・著名コラムニストのトーマス・フリードマン氏は、早期の経済活動再開に動けば、国民が感染の危険に一層さらされるとして、「これは米国版ロシアンルーレットだ」と強く批判した。
・オバマ前政権の幹部の一人は「トランプ氏は歴史上最も幸運な大統領の一人だった。なぜなら、これまで危機らしい危機に遭遇しなかったからだ。しかし、危機は必ず来る。それが今だ」と皮肉たっぷりに語っている。
・米国の歴史では、危機を乗り切れず再選を逃した大統領は何人もいる。
大恐慌から抜け出せず、1932年選挙でフランクリン・D・ルーズベルトに敗れたフーバーもその一人だ。
本来なら真っ先に
・本来なら、米国の大統領が真っ先に国際協力を訴え、治療薬やワクチンの開発、医療水準の低い途上国支援などで、リーダーシップ発揮を期待されたはずだ。
・選挙の年にパンデミックが起きたのは、政治の在り方を考える貴重な機会を提供した。しかし、米国に大きな転機が訪れるとは、必ずしも言い切れない。
(時事通信社「コメントライナー」2020年4月28日号より)
オバマ氏、トランプ政権を痛烈批判 「責任あるそぶりさえない」
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020051700158&g=int
・オバマ前米大統領は16日、トランプ政権の新型コロナウイルスへの対応について「彼らの多くは責任あるそぶりすら見せていない」と述べ、痛烈に批判した。
大学卒業式のオンライン上のスピーチで語った。
・オバマ氏は「何よりもこのパンデミック(世界的流行)は、責任ある人々が分かってやっているのだという考えに、ついに終止符を打った」と指摘し、政権の当事者能力のなさを非難。学生に「世界がもっと良くなるなら、それはあなた次第だ」とエールを送った。
・オバマ氏は退任以降、トランプ政権への表立った批判は避けてきたが、最近は今月上旬に非公開の席で政権のコロナ対応を「大惨事」と述べるなど、厳しい批判をためらわなくなっている。
(2020年05月17日)