モルヌピラビルはコロナ後遺症リスクを減らす

モルヌピラビルはコロナ後遺症リスクを減らす

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t344/202305/579614.html?n_cid=nbpnmo_podc_ronbun202305

(日経メディカル 2023/05/18 要ログイン)

米国の研究グループは、米国の退役軍人局の電子医療記録を分析し、新型コロナウイルスSARS-CoV-2)陽性と判定されてから5日以内にモルヌピラビルを処方された患者と、抗ウイルス薬や抗体医薬を使わなかった患者を対象に、陽性判定から30日後以降の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後遺症リスクを比較して、重症化の危険因子が少なくとも1つある人では、ワクチンの接種状況を問わず、モルヌピラビルの使用で後遺症の相対リスクが減少していたと報告した。

(2023年4月25日のBMJ誌電子版に掲載)

コメント;モルヌピラビル(商品名 ラゲブリオ)

 

・COVID-19の後遺症を経験した人は、世界で6500万人に及ぶと推定されているが、その症状は非常に幅広く、後遺症に対する特異的な治療法や、後遺症を予防する方法は確立されていない。

著者らは先に、SARS-CoV-2陽性と判定されてから5日以内に抗ウイルス薬のニルマトレルビル・リトナビルを使用すると、後遺症のリスクが減少したことを報告していた。

結論;

COVID-19重症化の危険因子が1つ以上ある人に、SARS-CoV-2陽性判定から5日以内にモルヌピラビルを使用すると、ワクチンの接種状況にかかわらず無治療の人よりも後遺症のリスクが低下していた。

 

関連サイト

ラゲブリオ(モルヌピラビル)とは

https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/011900001/22/10/25/00467/

コロナ飲み薬モルヌピラビル、米国では「最後の選択肢」

https://jp.reuters.com/article/merck-us-idJPKBN2K62HH

池澤夏樹 著「また会う日まで」

日経新聞・夕刊 2023.4.3

 

物語は主人公が病におかされ、死を前にして自らの人生を振り返る場面から始まる。先に逝った人々を思い起こすとき、聞こえてくるのは賛美歌「また会う日まで」。

 

 

賛美歌405番

「また会う日まで Till We Meet Again」

「神ともにいまして God be with you」

https://www.youtube.com/watch?v=G2Napv5SLeI

https://www.youtube.com/watch?v=qBveDaUX7aY

https://www.youtube.com/watch?v=UAi1dwxPhCE

https://www.youtube.com/watch?v=vpeACTOvb7A

 

限局性前立腺がんの15年追跡研究

限局性前立腺がんの15年追跡研究

積極的監視、摘除術、放射線で死亡率に差なし

https://medical-tribune.co.jp/news/2023/0324556058/?utm_source=Pickup&utm_medium=email&utm_campaign=mailmag230327

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英国のオックスフォード大学の研究グループは、限局性前立腺がん患者に対する3種類の治療  ① 積極的監視(active monitoring)療法、 ② 前立腺摘除術、③ 放射線療法 の予後を約15年追跡した第Ⅲ相非盲検Prostate Testing for Cancer and Treatment(ProtecT)試験の結果をN Engl J Med(2023年3月11日オンライン版)に報告。

3つの治療法で死亡率に差はなかったと述べている。

・今回報告した15年追跡の解析結果から、3つの治療群で前立腺がん特異的死亡率(97%が生存)や全死亡率(78%が生存)に差がないことが明らかになった。

前立腺摘除術や放射線療法により転移や局所進行、長期ADTの数こそ減るものの、これらの減少は死亡率の低下にはつながらなかった。

・主要ガイドラインではベースラインのPSA値、臨床病期、Gleasonグレード、生検所見に基づくリスク層別化を推奨しているが、われわれの試験はそのような方法の限界を明らかにした。

・同試験の患者登録に際しては、マルチパラメトリックMRI前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的としたPET診断は使用されず、生検も画像誘導で行われたものではないと付言し、今回の研究には限界があるとした。

 

関連サイト

前立腺全摘と経過観察で全死亡率に差なし」

https://medical-tribune.co.jp/news/2017/0726509605/

(要ログイン)

前立腺がん監視療法で過剰治療を防げ!」

https://medical-tribune.co.jp/news/2021/0204535121/

(要ログイン)

 

前立腺がん 治療せず経過を観察する場合

前立腺がん 治療せず経過を観察するのはどんな場合?

https://style.nikkei.com/article/DGXZQOLM202N20Q3A320C2000000?channel=ASH00002

全国がん登録の2018年の統計によれば、日本で前立腺がんと診断された人は年間約9万2000人で、男性が発症するがんの第1位となっている。

ただ、前立腺がんはほかのがんと比べると進行が緩やかで、発見から5年後の生存率は99%以上と、死亡率はそれほど高くない。

とはいえ、前立腺がんのすべての進行が緩やかというわけではなく、2~3割は「足が速い」といわれるケースもある。

しかも、頻尿や残尿感などの尿トラブルが表れる前立腺肥大症とは異なり、前立腺がんは初期に自覚症状があることはまれだ。

前立腺肥大は尿道を取り囲む内腺と呼ばれる部分で発生するため、尿道が圧迫されることでさまざまな尿トラブルが起きる。

それに対し、前立腺がんは主に、尿道から離れた外腺と呼ばれる部分に悪性の腫瘍が発生するため、がんが進行して尿道を圧迫するようになるまで自覚症状が起きにくい。

尿トラブルで受診して前立腺がんが見つかる場合は、すでにがんが進行してしまっているケースも少なくない。

そうなってからでは、がんを根本的に治す「根治的治療」が難しくなることもある。

前立腺がんは50代以降に増える。

そのため、前立腺がんを早期に見つけるための検査である「PSA検査」を、50代以降は定期的に受けることが勧められる。

前立腺がんと診断されても、がんの進行度や悪性度が低い場合には、定期的に検査を受けながら経過を観察する「監視療法」が行われることがある。

実際に監視療法を選択する患者さんは、75歳以上の後期高齢者が多いのが現状だ。

50代、60代といった比較的若い世代では、その後の平均余命は20年以上ありますから、がんを根本的に治して社会復帰することを目標に、治療を進めていくことが多い。

(日経Gooday 30+ 2023.3.25)

渡辺内科・ツイッター 2023.3.10

<気温感受性高血圧 ①> 10°Cの気温変化で、血圧10mmHg以上変動する状態のこと。脳心血管疾患の発症に関係することがわかってきた。血圧は基本的に朝方に高くなるがこの現象は屋内と屋外の温度差が大きい冬に多く現れる、

 

<気温感受性高血圧 ②> 一時的な血圧上昇でも血管は傷つくといわれている。急激な温度変化はできるだけ避けたい。気温感受性高血圧の人は、室内の温度は22~24℃に保つようにする。

 

<PSA検査> 加齢が原因で前立腺が大きくなる「前立腺肥大症」でも数値が高くなる。前立腺が刺激を受けた場合にも、PSAが血液中に漏れ出ることがある。そのためPSA値が基準 値以上の人のうち、がんが発見されるのは3割程度という報告もある。

 

<借金棒引き ①> 関ケ原の合戦の直前、前田利家は臨終の床にあったが、死ぬ直前にいろいろと整理をした。その中に「大名に貸した貸金の処理」があった。長男・利長が、この帳簿を見つけて、「父上、これをどうしましょうか」と訊いた。利家は笑って、「全部、灰にせよ(燃やせ)」と言った。

 

<借金棒引き ②> 錚々たる大名が、かなりの額を父の利家から借りていたため利長はちょっと惜しそうな顔をした。その中に、伊達改宗の借用書があった。利長はこれを拾い出して、「これもでございますか」と訊いた。利家はちらと借用書を見たが、思わず微笑んで、「その借用書こそ、真っ先に燃やせ」

 

<借金棒引き ③> 眉を寄せて怪冴な顔をする息子に、「もし、わしが死んだあと伊達改宗から『なぜだ?』という問い掛けがあったら、父は風流心の代金ですと申しておりました、と答えろ」と言った。利長には何のことかわからない。

 

<借金棒引き ④> そこで父の死後、生前利家の脇にいて細かいことまで世話をしていた老臣にこのことを訊いた。老臣も笑った。そして、「大殿(利家)のお言葉通りでございますよ」と言った。

<借金棒引き ⑤>「おそらく、小田原の陣だと思いますが、あの時の伊達様は急いで太閤殿下(豊臣秀吉)のところへ駆けつけたために、路銀に不自由をなさっておられました。そこで、大殿がお立替になったのだと思います。この時、伊達様は興味深いことをなさいました」

 

伊達政宗の「ひょうたんから駒」(ビリッケツから優勝者へ)

汚い瓢箪を景品に当てた大名が、実は「奥州随一の名馬」という一番素晴らしい景品を貰えたという有名な話。

 

<学歴貴族 ①> 近代日本において、特定の学歴で一目をおかれ、貴族称号のように機能していることを比喩した言葉。戦前においては旧制高等学校出身者がその典型であった。

 

<学歴貴族 ②> 当時の学校体系は複線教育型に近く、太平洋戦争開戦遥か前の旧制高校卒業者は、多くても該当年齢男子人口の1%にも満たないといわれ、大学に進学した者自体が少なく門戸は男子にのみ開かれたものであった。

 

<学歴貴族 ③> 旧制高校の生徒は白線入り学生帽にマント姿で、深窓のお嬢様から町娘までが恋焦がれる存在であった。                     (以上「ウイキペディア」より)

 

教養主義 ①> 旧制高等学校の雰囲気の中で放たれる「芳香としての教養主義」は、学問や文化への尊敬の気持ちを残した。教養主義は、自ら作品をつくり、独創を誇るのではなく、傑作に接し、人類の文化の重みを知ることによる人格形成だった。

 

教養主義 ②> そうした教養主義は、受動的といえば受動的、知の権威主義といえば権威主義ではあるが、生涯にわたる学問や文化への畏敬心を生んだ。

                         (以上「ウイキペディア」より)

 

<「行雲流水」>

「最後は、なんとかなるもの。考えすぎず、過ごしていれば案外悪くない結果になります」

                         五木寛之)  

 

 

COVID-19罹患後のcough hypersensitivity syndrome(CHS)

COVID-19罹患後のcough hypersensitivity syndrome(CHS)

・オミクロン株流行期以降COVID-19罹患後に咳嗽が続くという患者さんが増えている。

・多くは感染性咳嗽または感染後咳嗽であり2~3週間程度で改善するが、なかには対症療法を行っても8週間以上持続する例もある。(8週間以上持続する咳は「慢性咳嗽」と定義づけられる)

・COVID-19罹患後の長引く咳に対する治療は文献が少なく、確立した疾患とするには議論があるが、咳嗽診療の現場では、経験している開業医や呼吸器内科医、総合内科医、耳鼻科医は多いのではないかと推測される。

・一般的な咳嗽診療は発症からの症状持続期間により急性咳嗽(3週間未満)、遷延性咳嗽(3週間以上8週間未満)、慢性咳嗽(8週間以上)に分類される。

・実際の臨床現場では遷延性嗽と慢性嗽は明確な区別をつけないことが多い。

・日本呼吸器学会が発行した「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン」のフローチャートも遷延性咳嗽と慢性咳嗽を一括りにしている。

・3週間以上持続する咳嗽患者はまずは病歴、身体所見、そして胸部X線写真を確認する。

・病歴は痰の有無と性状、咳嗽の強度(VASスケール、具体的に咳で困る状況:夜間眠れない、人と話すと咳込む、咳込んで嘔吐する)、喫煙歴、先行気道感染の有無、喘息関連(既往、家族歴、長引く咳嗽のエピソードの有無、日内変動や天気での変化、自宅の環境など)、咽頭がむずがゆい感覚、逆流性食道炎の症状、鼻汁や後鼻漏の有無を確認する。

・また、薬剤起因性咳嗽の原因となりうるACE阻害薬の確認をする。ただし、COVID-19罹患後であることがはっきりしている場合には否定的である。

・身体所見では呼吸音は吸気、呼気共に深吸気、努力呼気まで確認する。

・またこの時点で胸部X線写真が正常かどうかは重要である。特に肺がんや肺結核の除外、間質性肺炎やその他びまん性肺疾患がないかを確認する。

検査では好酸球性炎症の評価(喀痰、末梢血好酸球、呼気一酸化窒素)、アトピー素因(血清総lgE値、必要に応じて特異的lgE)は参考になる。

・胸部X線写真で異常がないと判断しても、膿性痰が持続するときは痰培養(特に抗酸菌培養を提出する。

気管支結核は稀であるが、画像上肺野の異常が乏しいわりに喀痰から結核菌の排菌が多いために注意を要する(漫然と吸入ステロイドを処方され、後からた気管支結核と診断される場合もある。

・この時点である程度疾患の可能性が絞れたら治療的診断を行う。

咳嗽、痰が改善しないときは胸部CT(胸写では気付かない肺野病変、気道の腫瘤性病変や気道異物など)、鼻症状があれば副鼻腔CTも検討する。

・上記で対応可能な患者さんは多数おり、一般内科医、プライマリーケア医でこの対応がなされれば咳嗽患者全体のQOLは向上するだろう。

一方で上記の対応でも症状が改善しない慢性難治性咳嗽も報告されている。

・その中には、原因が判明し特異的治療を行うも症状コントロールが困難なchronic refractory cough、原因自体が分からず症状コントロールが困難なunexplained cough syndromeがある。これらを説明しうる病態としてcough hypersensitivity syndrome(CHS)が提唱されている。

CHSは「低レベルの温度・機械的・化学的刺激を契機に生じる難治性の咳を呈する臨床症候群」と定義される。

病態は迷走神経など咳嗽に関与する知覚神経の過敏、中枢神経の関与が想定される。

・咳嗽の知覚過敏を抑える目的でガバペンチンやプレガバリンが治療選択肢となる。

最近使用可能になった選択的P2X3受容体拮抗薬は迷走神経の咳嗽に関与する知覚を遮断することで、慢性難治性咳嗽が改善する。

・またCOVID-19による長引く咳嗽の機序として迷走神経に対する感染や免疫反応による知覚過敏の可能性が指摘されている。

・COVID-19罹患後に2ヵ月以上長引く咳嗽で、画像所見で大きな問題がなく、既存の鎮咳薬や吸入ステロイドで改善しない例に、プレガバリンやP2X3受容体拮抗薬で改善が得られる症例は多いものと推定される。

参考及び引用

DOCTOR’S MAGAZINE 2023.2  名嘉村 敬 先生