大腸がん、精密検査のすすめ
日本人男性で一番多いがんは前立腺がん、女性では乳がんで、男女それぞれ9人に1人が罹患する。
男女合わせて一番多いのが大腸がんで、肥満や運動不足などで増える欧米型のがんの代表だ。
大腸がん検診は国が推奨するがん検診のなかでも一番簡単な検査で、痛くもかゆくもない。
便を採って血液が混じっていないかを確認する「使潜血検査」だ。
2回便を採るのが標準となる。
暑い時期はビニールで包んで冷蔵庫に入れておくと精度が上がる。
大腸がんの一次検診を1,000人が受けたとすると、934人は陰性、66人が要精密検査(大腸内祝鏡)となる。
66入のうち精密検査で最終的に大腸がんと診断されるのは2人に過ぎないから、要精密検査といわれてもあまり心配する必要はない。
むしろ早期発見のチャンスととらえるべきだ。
がん検診で見つかるがんの多くは早期で、例えばステージ1の大腸がんの5年生存率は95%に上る。
しかし大腸がん検診の問題は、精密検査の受診率が低いことだ。
住民検診での精密検査の受診率は乳がん検診で約9割、肺がん検診、胃がん 検診で8割強だが、大腸がん検診では約7割にとどまる。
会社で行う職域がん検診では5割以下と低迷している。
これではがん検診を受けたことにはならない。 精密検査を受けない理由として「時間がない」や「費用がかかる」のほか、多くの人が「痔のため」をあげている。
痔のありなしで便潜血検査の陽性率はほぼ変わらないというデータがある。
痔だけが原因で陽性になる確率は2%程度とされる。
(東京大学特任教授・中川恵一)
日経新聞・夕刊 2023.6.21